【Audible 書評】厚切りジェイソン『ジェイソン流お金の増やし方』

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  • 書名: ジェイソン流お金の増やし方
  • 著者: 厚切りジェイソン
  • 出版社: ぴあ
  • 発売日: 2021/11/12
  • Audible聴き放題対象作品

\ 本記事の書評本はAudibleで聴いています /

投資にまるで関心がなかったとしても、「NISAくらいはやったほうがいいのかもしれない」と思ったことが一度はあるはず。

そうした「入り口」に立っている人にとって、この本はちょうどよい導線になると思う。

著者は芸人という肩書きもあって、軽い読み物を想像していたが、内容は想像以上に堅実だった。「お金に対する真摯な姿勢」が本書の核心だ。

今回は、Audibleで聴いた感想をもとに、投資初心者の視点からレビューしていく。

目次

ツッコミどころがないほど“正しい”一冊

本書を読んで(正確にはAudibleで聴いて)、最初に思ったのはこれ。

いちいち正論ばかりだけど、逆にお笑い芸人の本としてどうなのよ?

極端な節約エピソードを除けば、ツッコミどころがほとんどない。むしろ、どの主張も「まあ、それはそうだよな」と思うものばかりだ。

本書に書かれている内容は、投資系のブログやYouTubeをある程度見てきた人にとっては既視感のあるものが多い。自分もそのひとりだった。
しかし、それを著者の視点で整理し直してくれることで、いわば「答え合わせ」ができる。

  • 収入を増やす
  • 支出を減らす
  • 投資で増やす

著者が挙げるお金を増やす方法は、シンプルにこの3つだけだ。

本書の良さは、投資のノウハウだけでなく、「どう働くか」「どう暮らすか」といった生き方の指針まで含まれている点。これは人生設計の本なのだ。

収入を増やす(スキルアップとキャリアアップ)

投資のイメージイラスト

副業ができるなら挑戦すればいいし、できないなら今の仕事でスキルを磨き、ポジションを上げていく。

著者は、GEに入社したとき周囲のエリートたちと比べて、特別な才能はなかったと語る。だが、自分には「グリット(やり抜く力)」があった、という。

日中は全力で働きながら、夜は大学に通って修士号を取得。常に「市場価値を上げる」という視点でキャリアを考え、スキルと実績を積み上げていった。

転職や昇進によって収入を上げれば、自然と投資に回せる元手も増える。副業だけが収入アップの手段ではないのだ。

支出を減らす:節約は最強の武器

著者が強調するのは、節約の重要性。特に、固定費を徹底的に減らすことを推奨している。

例えば、携帯料金は格安SIMを契約し、機種は中国製の1万円のものをAmazonで購入。徹底したコストカットだ。確かに、格安SIMは通信速度が遅くなることもあるが、無駄な出費を減らすためには効果的な方法だ。

また、食費を節約するために、著者は仕事以外での飲み会をほとんど避け、家族との食事を大切にしているそうだ。芸能人でありながら、これほどシンプルな生活をしていることに驚いた。

だからこそ、お金は貯まり、投資に回せる資金が生まれるのだと納得できる。

投資でお金を増やす

具体的な投資方法については、とにかく堅実路線だ。

すなわち、長期投資、分散投資、積立投資の三本柱である。

株を買ったら売らず、個別銘柄には手を出さない。もちろん、一括投資も避ける。要するに、NISAの積立投資信託をやればいいという話だ(ジェイソン自身はNISA以前からこの方針で投資をしてきたが)。

私が面白いと思ったのは、彼が推奨する投資信託(ETF)だ。

日本のNISAユーザーに人気が高い「S&P500」や「オールカントリー」といった銘柄に対し、ジェイソンが選んでいるのは「VTI」—米国市場全体に分散投資できるETFである。

S&P500がアメリカの大企業500社のパッケージなのに対し、VTIは中小企業も含めた約4000銘柄に分散投資できる。より広く、より「アメリカ経済全体」に賭ける商品と言える。

実際、S&P500とVTIの値動きに大きな差はない。しかし、ジェイソンはあえて「アメリカという国の未来」に信頼を置いて、VTIを選んでいる。これは投資方針というより、一種の価値観の表明にも見える。

YouTubeでの対談でも、「100年後もアメリカは繁栄していると思う」と語っていた。このあたり、彼の生まれ育ちやキャリアに基づく「アメリカ成長への信頼」が見て取れる。

とはいえ、日本の景気停滞を長年目の当たりにしてきた私たち日本人にとって、この「未来への全幅の信頼」は、少し眩しすぎるなとも感じた。

最後に。未来に対する不安と信頼の間で(2025年4月10日記)

関税戦争のイメージ

2025年4月2日。
アメリカ大統領・トランプが「相互関税」を発表。世界中に高額な関税を課すという一手に、グローバル市場は騒然とした。

さらに4月9日。
90日間の措置停止を表明する一方で、中国への関税を125%に引き上げると再び爆弾発言。
結果、NISAで一番人気の「S&P500」、「オールカントリー」、そしてジェイソン推しの「VTI」までもが乱高下を繰り返している。
この状況を、どう受け止めればいいのか。
ジェイソン自身、過去にコロナショックでの急落を経験している。
毎日チャートを眺めながら、冷や汗をかきつつも、売らずに耐え抜いたという。そのときのVTI(楽天版)のチャートがこれだ(※引用 ヤフーファイナンス):

楽天・全米株式インデックス・ファンド

2020年2月にピークをつけたのち暴落、そこから約半年で回復を果たした。
だが、彼の父親が体験したリーマンショックは、回復までに5年を要したという。

今回はどちらに近いか。
半年で戻るのか、それとも5年、あるいはそれ以上の時間をかけることになるのか。

あのとき、世界は「ウイルス」という共通の敵に立ち向かった。
今回は、「敵」が国家だ。アメリカは中国との経済戦争に突入し、世界は分断されようとしている。

果たして私たちは、ジェイソンのように、この不安定な世界で、それでもなお「アメリカの未来」を信じることができるのだろうか。


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