【初心者向け】ビットコインの「マイニングリスク」とは?

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はじめに

仮想通貨(暗号資産)投資を本格的に検討している中で、投資判断の前にリスクを十分に理解しておく必要があると感じています。仮想通貨には多くの種類がありますが、まずは最も代表的なビットコインのリスクについて調査することにしました。

ビットコインやその他の仮想通貨には、価格変動リスク、取引所リスク、規制リスク、詐欺リスクなど様々なリスクが存在しますが、調査を進める中で、個人的にはマイニングに起因する構造的リスクが特に気になりました。本記事では、この点に焦点を当てて分析します。

ビットコインの「マイニング」とは、世界中のコンピューターがビットコインの取引を検証・承認し、新しいビットコインを生み出すプロセスです。この作業は理論的には個人でも参加可能ですが、現実的には資金力のある大手企業が市場を支配する構造となっています。

最も重要な問題は、マイニングの寡占化により、ビットコインが本来持つ「分散性」という根本的価値が損なわれていることです。世界中の多数の参加者によって維持される分散型通貨として設計されたビットコインが、実際には上位数社の大手企業によって支配される構造になっており、これがビットコインの長期的な価値と安定性に関わる重要なリスク要因となっています。

目次

第1章:ビットコイン、その他仮想通貨のリスク概観

1.1 価格変動と価値の裏付けリスク

ビットコインには、株式のPERや不動産の賃料利回りのような客観的な価値評価基準が存在しません。希少性(上限2100万枚)、実用性(国際送金等)、セキュリティなど価値を支える要素はありますが、これらから「適正価格」を算出する明確な方法がないのです。

この評価基準の不在が極端な価格変動を生み、投資というより投機的な性格を強めています。長期的には下値を切り上げてきましたが、明確な価値基準がない以上、将来の価格予測は極めて困難です。

1.2 取引所リスク

過去に仮想通貨取引所へのハッキング被害が複数発生しています。しかし、現在は大手取引所のセキュリティ体制が大幅に強化され、被害補償制度も整備されています。重要な点として、取引所がハッキングされても、ビットコイン自体のブロックチェーン技術は破られていません。これは銀行に預けた資金が盗まれても、通貨そのものの信用が損なわれないのと同様です。

1.3 規制リスク

各国政府の政策変更が市場に大きな影響を与えています。中国での仮想通貨取引全面禁止などが代表例で、規制環境の変化は価格に直接的な影響を及ぼします。

1.4 投資詐欺リスク

新しい仮想通貨プロジェクトへの投資を装った詐欺が多発しており、SNS上でのポンジスキーム的な勧誘が問題となっています(参考1:特定プロジェクトへの過剰な宣伝)(参考2:FTX詐欺事件)。これらはビットコイン自体とは無関係ですが、仮想通貨全体に対する社会的信頼の低下要因となっています。

1.5 技術的リスク

ビットコインは、その仕組みを維持するための作業(マイニング)に膨大なエネルギーとコストが必要です。他の仮想通貨と比較して、このマイニング構造(PoW)から生じるリスクは、ビットコインが最も規模が大きく影響度が高いため特に重要と思われます。


次章以降では、このマイニング構造から生じる具体的なリスクについて解説します。

第2章:ビットコインマイニングの基本と問題の所在

2.1 マイニングとは何か

ビットコインの「マイニング」とは、世界中のコンピューターがビットコインの取引を検証し、新しいビットコインを生み出す作業のことです。マイナー(採掘者)は複雑な計算問題を解いて、約10分ごとに新しいブロックを作成し、報酬としてビットコインを受け取ります。この作業により、ビットコインの取引が正しく処理され、ネットワーク全体の安全性が保たれています。

2.2 個人から企業主導へ

当初、ビットコインマイニングは自宅のパソコンでも参加できる分野でした。しかし技術の進歩により、現在では高性能な専用機器(ASIC)と大量の電力が必要となり、個人での参入は事実上困難になっています。その結果、資金力のある大手企業がマイニング市場を支配する構造に変化しました。

2.3 分散性という理想の崩壊

ビットコインは「政府や銀行に頼らない分散型通貨」として設計されました。世界中の多くの人が参加することで、誰も支配できないシステムを目指していたのです。しかし現実には、少数の大手企業がマイニングの大部分を担うようになり、本来の分散性が失われつつあります。

2.4 投資家にとっての問題

この変化は投資判断において重要な意味を持ちます。ビットコインの価値の根拠である「分散性」が損なわれることで、少数の企業の動向がビットコイン価格を大きく左右するリスクが生まれています。また、これらの企業が結託すれば、理論上はビットコインネットワークを操作することも可能になってしまいます。


次章では、この企業寡占化の具体的な状況について詳しく見ていきます。

第3章:マイニングリスクの詳細

3.1 地理的集中リスク

ビットコインの新規発行(マイニング)は、電気代が安い国に集中する傾向があります。マイニングには大量の電力が必要なためです。

2024年末時点で、アメリカが世界のマイニング計算力の約40%を占め、カザフスタンが約14%で続いています。かつて中国が世界の約65%を占めていましたが、2021年の全面禁止により、マイナー(採掘業者)は他国へ移転しました。

特にアメリカでは、テキサス州などが安い電力と優遇政策で企業を誘致。最大手のFoundry USAは、多数の小規模マイナーから計算力を集めて運営する「マイニングプール」として急成長しています。

このような地理的集中は、特定の国の規制変更が世界のビットコイン取引に影響を与えるリスクがあります。実際、2022年にカザフスタンで暴動が起きた際は、インターネット遮断により世界のマイニング能力が一時的に低下しました。

参考記事:

3.2 企業寡占化リスク

マイニングプールとは

個人でマイニングを行っても成功確率は極めて低いため、現在では「マイニングプール」という仕組みが主流です。これは、世界中のマイナーが計算力を集約し、成功時の報酬を参加者で分け合う仕組みです。

マイニングプールの寡占化

現在、ビットコインネットワークの計算能力は、少数の大手マイニングプールに集中しています。Hashrate Indexによれば、6月21日現在、最大手のFoundry USAが約33%、第2位のAntPoolが約20%を占め、この2社だけで全体の過半数を握っています。

Foundry USAは米国のDigital Currency Group(DCG)傘下の企業で、中国のマイニング禁止後に急成長しました。一方のAntPoolは、中国の大手マイニング機器メーカーBitmain(ビットメイン)が運営しています。

この寡占化により、理論上は「51%攻撃」と呼ばれるリスクが生じます。これは、ネットワークの計算力の過半数を支配する者が、取引記録を改ざんしたり、同じビットコインを二重に使用したりできる可能性を指します。現状では複数のプールに分散していますが、もし上位プールが結託すれば、このような攻撃が可能になってしまいます。

参考記事:

3.3 供給網リスク

ビットコインマイニングで使用される機器の供給構造にも重大なリスクが存在します。

マイニングに使われるのは「ASIC(エーシック)」と呼ばれる専用装置で、ビットコインのマイニング処理のみに特化した高性能チップです。このASICチップは主に台湾のTSMC(台湾積体電路製造)が製造していますが、それを組み込んでマイニング機器として製品化・販売しているのは主に中国企業です。

2024年の調査によると、中国のBitmain社がビットコインASIC生産の約82%を占め、他の中国企業MicroBT(15%)、Canaan(2%)と合わせて、上位3社で市場の99%を支配しています。つまり、チップ製造は台湾、機器組み立て・販売は中国という二重の地理的リスクを抱えた構造になっています。

この極端な集中は、地政学的緊張や貿易摩擦の影響を受けやすい構造を生み出しています。実際に、米中間の貿易摩擦が激化する中で、Bitmainは2024年12月に米国での生産ライン拡大を発表し、「北米の顧客により迅速な対応と効率的なサービスを提供する」ための対策を講じています。

しかし、マイニング機器の供給が特定の企業や地域に依存している現状は、突然の政策変更や貿易制限によってマイニング業界全体に大きな影響を与えるリスクを抱えています。

参考記事:

まとめ:ビットコインの本質と向き合い方

共同幻想としての価値

本記事で見てきたように、ビットコインには様々な構造的リスクが存在します。価格の激しい変動、マイニングの地理的・企業的集中、供給網の脆弱性、そして何より、価値の裏付けがないという根本的な問題です。

ビットコインは純粋な「共同幻想」の産物です。金や不動産のような物理的実体も、株式のような企業収益の裏付けもありません。その価値は、世界中の人々が「価値がある」と信じることによってのみ成立しています。

しかし、考えてみれば、現代社会の多くのサービスも同様です。ブランド品、エンターテインメント、アート作品など、衣食住に直接関わらないものの多くは、究極的には「満足感」や「所有欲」に対価を払っているに過ぎません。その意味で、ビットコインも現代の価値体系の延長線上にあるとも言えるでしょう。

変わりつつある未来

リスクばかりではありません。2024年の米国でのビットコイン現物ETF承認により機関投資家の参入が加速し、日本でも税率を20%に引き下げる議論が進んでいます。エルサルバドルに続き複数の国が国家準備資産としての採用を検討し、企業の財務戦略としても広がりを見せています。

技術面でもLightning Networkにより少額決済が実用化され、一部の国では日常的な支払い手段として使われ始めました。これらの制度整備と技術革新により、ビットコインは「怪しい投機対象」から「新しい金融インフラ」へと変貌しつつあります。

私は、暗号資産が法定通貨と並んで日常的に使われる未来を想像できます。それはAIやロボットが人間と共存するように、新旧の技術が融合した世界として。リスクは確かに存在しますが、失っても困らない範囲で、この歴史的な変革期に立ち会うことには意味があるのかもしれません。


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